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ITアウトソーシング事業者の敗訴事例:海外へのITインフラ導入は成功したのに、1枚の通関申告書で全額賠償に

海外へのITインフラ導入と現地設置は無事に完了したものの、通関方式を明記しなかったため30万人民元超を賠償。判決の論理、関連法規、ITアウトソーシングのリスク管理を振り返ります。

サーバーラックでネットワーク機器の配線を行うITエンジニア(オンサイトでのITインフラ導入)
ひとことで言うと: マネージドITサービス/ITアウトソーシング事業者として、当社は中国国内の機器メーカー様向けに、海外でのITインフラ導入を実施しました。機器は期日どおりに海外のデータセンターへ届き、当社の現地エンジニアがラック搭載・設置・調整をすべて完了し、お客様の書面確認、海外バイヤーの検収・利用・支払いも済み、裁判所も当社のサービス料全額を認めました。ところが、第三者のフォワーダーが混載通関を行ったため、お客様は自社を発送人とする輸出通関申告書を入手できず、輸出代金の外貨受領・人民元への決済ができなくなり、代金は送り返されてしまいました。裁判所は、受託者である当社に過失があったと認め、代金全額と利息の賠償を命じ、二審でも維持されました。当社はすでに全額を履行しています。本レポートでは、判決の論理、その背景にある法規、当社の誤り、そしてお客様と同業者が同じ事態を避けるための方法を整理します。

なぜ敗訴の事例をあえて公開するのか

ITアウトソーシング業界では、自社が敗訴した訴訟について公に語る例はほとんどありません。さらに珍しいことに、この訴訟で当社が提供したITサービス自体は成功しており、敗れたのはサービスの範囲外にあった1枚の書類でした。それでも当社が書くと決めた理由は3つあります。

  • 結果はすでに確定しています。 判決は確定し、賠償も全額支払い済みです。本稿は反論のためのものではなく、裁判所の認定を評価し直すものでもありません。
  • このリスクは業界に広く存在します。 多くのITサービス事業者が、調達代行、発送代行、通関代行、支払代行といった「本業以外」のことを、ついでに引き受けています。うまくいけば付加価値になりますが、問題が起きれば全額を負担することになります。
  • お客様にとっても、依頼の出し方を知ることが重要です。 本件では、お客様が本当に必要としていたことが、契約から納品まで一度も書面に残されていませんでした。結局、「当初何を約束したのか」という問いに答えたのは裁判所でした。

文中では、お客様名、海外バイヤー、事件番号、裁判所、人名、正確な金額を匿名化しています。判決に関する記述はすべて、確定判決書に記載された事実と理由に基づいています。

経緯:6万人民元足らずの契約が、なぜ30万人民元超の賠償になったのか

契約の内容

2022年春、中国国内のネットワーク機器メーカー(以下「お客様」)は、シンガポールの企業と機器の売買注文を締結しました。貨物の価額は約4.1万米ドルです。納品のため、お客様は当社と「ネットワーク機器設置・導入契約」を結びました。内容は2つに分かれていました。

  • サービス1: ネットワークスイッチ一式を、中国・成都からシンガポールの指定データセンターまで輸送します。「物流および通関を含み、輸送方式は航空便」、ドアツードアです。
  • サービス2: 現地でのラック搭載、設置、調整の作業です。

契約前の見積メールでは、運賃が「関税および両国通関を含む、ドアツードア」であることを明記していました。いわゆる「両国通関」とは、輸出国と輸入国の双方の通関を物流側が一括して行うことです。

契約にはもう1つ、後に重要となる条項がありました。お客様は、サプライヤーに対し「お客様または最終ユーザーが認める、お客様の代金受領に利用できる受領証憑」の提供を求めることができるというものです。また、サービスがお客様または最終ユーザーの要求を満たさない場合、お客様は当該サービス料の支払いを延期できるとされていました。

履行の過程

  • 当社は第三者のフォワーダーを手配して集荷し、貨物は成都から深圳へ運ばれ、深圳の通関地で輸出通関を済ませた後、航空便でシンガポールへ送られ、期日どおりに到着しました。
  • その間、お客様は配送先と日時を2度変更され、当社はそれに対応しました。
  • 当社のエンジニアが海外の現地で、ラック搭載・設置・調整をすべて完了しました。実際の作業時間は当初計画の2倍でした。追加費用はメールでお客様に報告し、先方は当日中に「OK、問題ありません」と返信されました。
  • 納品完了からおよそ1週間後、お客様のプロジェクト担当者がチャットで、国際取引の決済は通関申告書が基準であり、「輸出通関申告書は必須」だとして、提供できるかを尋ねられました。物流担当の当社社員は「物流側に確認します。こちらはフォワーダーに発送を任せているので」と返信しました。

問題はここにありました。第三者のフォワーダーが用いていたのは、「両国通関・関税込み」の一般的なやり方でした。複数の荷主の貨物を1件にまとめて通関し、同じ航空コンテナに積み、同じマスター運送状を共用し、到着地で仕分けて配送する方式です。この方式では、お客様を発送人とする個別の通関申告書は存在せず、お客様を荷送人とする航空運送状もありません。

代金が「消えた」仕組み

納品からおよそ5か月後、海外のバイヤーは約4.1万米ドルの代金をお客様に送金しました。外為管理の要件上、お客様が外貨を受領する際には取引の真実性を証明する必要があり、「この貨物は確かに自社が輸出したものだ」と示す中核の書類が通関申告書です。お客様は通関申告書を入手できず、この代金は約10日で海外のバイヤーに返金されました。

その後、お客様は当社への残りのサービス料の支払いを停止し、損失を負担するよう書面で通知されました。

訴訟の結果

  • お客様の提訴: 当社に通関申告書と航空運送状の交付を求め、交付できない場合は代金全額(当日の為替レートで約30万人民元)と利息の賠償を求めました。
  • 当社の反訴: お客様に、残りのサービス料と追加費用(合計約5万人民元)および支払遅延利息の支払いを求めました。
  • 一審判決: 当社が代金全額を賠償し、外貨受領に失敗した翌日からの資金占有利息を1年物LPRで支払うこと。お客様が当社に残りのサービス料と追加費用を支払うこと。当社が主張した支払遅延利息は棄却されました。
  • 二審: 原判決を維持しました。
  • 履行: 双方が互いに負う金銭債務を相殺したうえで、当社が差額をお客様に支払い、賠償はすべて完了しました。

数字を整理します。この契約のサービス料の総額は6万人民元足らずでしたが、最終的に当社が負担した賠償の元本と利息は30万人民元を超え、契約総額の約5倍に達しました。これには、二審分の訴訟費用、弁護士費用、チームが費やした時間は含まれていません。

ITサービス自体は何を成し遂げたのか:成功したクロスボーダーITインフラ導入

どこで敗れたのかを論じる前に、成し遂げた部分を明確にしておきます。責任を軽く見せるためではなく、この件の性質を決める事実だからです。裁判所は当社のITサービスの品質に問題があったとは認定しておらず、争点はサービスの範囲外にある通関書類に集中していました。

国際物流と現地導入は問題なく完了した

  • 物流は期日どおりに到着。 機器は成都で集荷され、深圳で輸出通関を経て航空便でシンガポールへ送られ、契約が定めるドアツードアの期間内に届きました。
  • 2度の変更にもすべて対応。 最終ユーザーのデータセンターの事情により、配送先と搬入・ラック搭載の日程が2度変更され、最終的に2日に分けて納品し、ラック搭載前の分は梱包を解いて入庫することになりました。当社は新しい要望に合わせて荷下ろしの駐車枠を取り直し、現地の作業計画を組み替えました。
  • オンサイトITサポートを一度で完了。 当社の現地エンジニアが、スイッチ一式のラック搭載・設置・調整を完了しました。実際の作業は6人日で、当初計画の3人日の2倍でしたが、追加の作業量は現地チームが吸収し、全機器が1週間で稼働しました。

お客様も裁判所も、サービスの成果を認めた

  • お客様が書面で確認。 作業完了後、当社が施工日と進捗表を送付し、お客様のプロジェクト担当者が当日中にメールで確認の返信をくださいました。
  • 最終ユーザーが検収・利用し、支払い。 海外のバイヤーは機器を受領して使用を開始し、お客様へ代金を全額送金しました。
  • 裁判所は当社のサービス料全額を認めた。 判決は、当社の残りのサービス料と追加費用はいずれも支払われるべきと認定しました。追加費用の根拠は、まさに双方が実際の作業時間を確認したメールでした。

これは、マネージドITサービス事業者としての当社の本来の仕事、すなわち複数国ITサポート体制、現地エンジニアの手配、最終ユーザーのペースに合わせたITインフラ導入です。それはやり遂げました。当社が敗れたのは、ITサービスの中核ではないのに、同じ契約書に書き込まれていた代行事項です。ここが、本稿が同業者とお客様に注意を促したい点です。

裁判所はどう認定したのか:判決の3つの柱

結果を覚えるより、判決の論理を理解するほうが重要です。判決書の推論は3つのステップに分けられます。

ステップ1:IT契約の中の「物流+通関」は、貨物運送取扱契約と認定された

契約書の題名は「設置・導入契約」でしたが、裁判所は、お客様が当社に物流と通関のサービスを委託した部分については、双方の間に貨物運送取扱契約の関係が成立するとして、委任契約の規定を適用しました。

これが、その後の責任の基準を決めました。中国「民法典」第929条第1項は、「有償の委任契約において、受任者の過失により委任者に損害が生じた場合、委任者は損害賠償を請求できる」と定めています。

ここでの基準に注意してください。有償委任に必要なのは「過失」であり、「故意または重大な過失」までは要求されません。 当社はサービス料を受け取っていたので有償の受任者であり、基準は通常の過失です。

ステップ2:混載通関により「通関申告者と実際の取引当事者が一致しない」状態になった

裁判所は、契約で当社が通関サービスを提供し、「お客様の代金受領に利用できる受領証憑」を提供することになっていたと判断しました。ところが第三者のフォワーダーは、お客様の貨物を単独で通関せず、他の貨物と混載して1件で通関したため、次の結果が生じました。

  • 通関申告書上の発送人が、実際の輸出者ではなくなりました。裁判所は「税関法」第24条を引用しています。輸入貨物の荷受人と輸出貨物の発送人は、税関に対して事実のとおり申告しなければなりません。
  • お客様は、輸出代金の外貨受領・人民元への決済を通常どおり行えなくなりました。裁判所は同時に「外貨管理条例」第12条を引用しています。経常取引に係る外貨の収支は、真実かつ適法な取引に基づいていなければならず、金融機関は取引書類の真実性と、それが外貨収支と整合しているかを合理的に審査しなければなりません。

裁判所はさらに、双方がこの通関方式を合意して選んだことを示す証拠はなく、当社も通関前にこの方式をお客様に明確に告知していなかったと指摘しました。

ステップ3:専門資格を持つ以上、「当然知っているはず」とされる

これは、当社が最も重く受け止めるべき点です。

当社は訴訟で、お客様が自社名義で通関するのであれば、通関代理委任状を出し、電子口岸で所定の手続きを行うべきなのに、お客様は一度もそうしなかったと主張しました。これに対する裁判所の回答は、通関サービスの提供者である当社は、お客様にそれらの手続きを求めていなかったというものでした。

裁判所はまた、当社の営業範囲に貨物の輸出入と輸出入代行が含まれ、税関の輸出入貨物荷受人・発送人の届出もあることに着目しました。そのため、当社はお客様が輸出取引を行う以上、輸出代金の外貨受領・人民元への決済が必要であることを知っていたうえ、混載通関によってお客様が代金を受領できなくなるおそれがあることも当然知っているはずであるのに、この方式を採ったので過失があると認定しました。

言い換えれば、資格が充実しているほど、裁判所が「知っているべきだ」と期待する水準は高くなります。 営業許可証に加えた営業範囲の1項目、取得した届出の1件が、訴訟では「理解しているべきだった」という根拠に変わる可能性があります。

反訴部分:金銭は認められたが、利息は認められなかった

当社が主張した残りのサービス料は認められ、訴訟でお客様が争った追加費用も含まれました。理由は、双方のメールのやり取りから、お客様のプロジェクト担当者が実際の作業時間と追加費用について当日「OK」と返信していたことが分かり、裁判所がこれに基づいて契約で定めた計算方法で支持したためです。

一方、当社が主張した支払遅延利息は棄却されました。裁判所は、当社が受託事務の履行に過失があり、お客様が現在まで代金を回収できていない以上、お客様がそれを理由に支払いを拒むのは適法な履行拒絶の抗弁にあたると判断しました。

この点も覚えておく価値があります。当日返信されたメール1通が、約2万人民元の追加費用を守ってくれました。一方、書面で処理されなかった通関申告書の依頼1件が、当社からすべての利息を奪い、契約額の数倍に及ぶ賠償を負わせました。

問題の本質は何か:「1枚の通関申告書」ではない

これを単に「通関申告書を1枚もらい忘れた」話として理解すると、本当の教訓を見逃します。当社が繰り返し議論した結果、本質は3つあると考えています。

1. 当社が売っていたのは「結果」だけでなく「コンプライアンス上の証憑」でもあった

当社から見たサービス1の結果は、「貨物が安全に届き、通関が完了していること」でした。この結果は確かに実現しました。貨物は届き、機器は設置され、バイヤーも支払いました。

しかしお客様から見れば、越境取引の結果には3つの流れがあります。物の流れ、資金の流れ、書類の流れです。貨物が届いたことで完了するのは1つ目にすぎず、代金を受領できるかどうかは3つ目で決まります。外為の監督で審査されるのは「三つの流れ」が一致しているかどうかであり、3つをつなぐのが、まさにお客様を発送人とする通関申告書でした。

サービス事業者にとって、サービスの結果をお客様が次のコンプライアンス上の手続き(外貨の受領、税の還付、監査、保険金請求、資産計上など)に使う場合、書類そのものが納品物の一部です。「事が済んだ」ことだけを納めればよいわけではありません。

2. お客様の川下の契約のリスクが、サービス事業者に移った

お客様と海外バイヤーの間の売買契約、代金の受領方法、決済の取り決めについて、当社は当事者ではありません。当社は訴訟でも、バイヤーの支払義務は返金によって消滅しておらず、お客様はバイヤーに代金を請求できると主張しました。

しかし、裁判所の認定の筋道は次のとおりです。受託者に過失があり、その過失と委任者の損害との間に因果関係があれば、受託者は損害を賠償しなければならない。委任者が別の方法で回復できるかどうかは、別の問題である。

これが「リスク移転」の実際の仕組みです。お客様が進んでリスクを押しつけるのではなく、当社の1つの過失が、法的に川下のリスクを引き受ける通路になったのです。この通路が開くと、当社が負うのは自社のサービス料程度のリスクではなく、お客様の取引全体のリスクになります。

3. 双方が「明確な委託」の代わりに「デフォルトの流れ」を使っていた

振り返ると、双方に3つの時点で認識を明確にする機会がありましたが、どちらも行いませんでした。

  • 契約時: お客様は「代金受領のために、自社名義で通関する必要がある」とは言わず、当社も「両国通関・関税込みの方式では、貴社名義の通関申告書は出ない」とは言いませんでした。
  • 出荷前: 当社はフォワーダーに通関方式を確認せず、結果もお客様に伝えませんでした。
  • 最初に尋ねられたとき: 当社はチャットで「確認します」と返しただけで、書面での結論も、エスカレーションもありませんでした。

お客様は、「通関」には当然、自社名義の通関申告書の提供も含まれると考えていました。当社は、「通関」とは貨物を適法に通関させることだと考えていました。どちらの理解も成り立ちますが、裁判所は最終的に、専門の受託者が尽くすべき注意義務を基準に当社を評価しました。専門性に差がある関係では、明確に説明する責任は主に専門家の側にあります。

関連法規の早見表:お客様もサービス事業者も知っておくべき条文

以下は、本件の判決、双方の主張、弁護士の分析で実際に問題になった条文を、用途別に整理したものです。本節はリスクの注意喚起にとどまり、法的助言ではありません。個別の問題は、弁護士にご相談ください。

契約と責任

  • 「民法典」第929条(有償委任の過失責任): 有償の委任で、受任者の過失により委任者に損害が生じた場合、賠償しなければなりません。本件の中核となる裁判の根拠です。
  • 「民法典」第509条(全面履行と信義誠実の原則): 当事者は、約定に従って義務を全面的に履行し、契約の性質、目的、取引慣行に応じて通知、協力、秘密保持などの義務を履行しなければなりません。当社が果たしていなかったのは、まさにこの「通知義務」でした。
  • 「民法典」第577条、第584条(契約違反責任と予見可能性のルール): 損害賠償額は契約違反によって生じた損失に相当しますが、違反した側が契約締結時に予見した、または予見すべきだった損失を超えてはなりません。裁判所は、当社が外貨受領の必要性を「当然知っているはず」と判断したため、これは予見可能な範囲に入りました。
  • 「民法典」第591条(損害軽減義務): 一方が契約に違反した後、相手方は損害の拡大を防ぐために適切な措置を講じなければなりません。当社は訴訟で、お客様が10日以内に送金を返金し、代替案を採らなかったと主張しましたが、裁判所は採用しませんでした。
  • 「民法典」第142条および契約編通則の司法解釈第2条(契約の解釈と取引慣行): 契約条項の意味は、文言、性質、目的、取引慣行を踏まえて確定します。当社は「両国通関・関税込み」が業界の慣行だと主張しましたが、裁判所は、双方がこの通関方式を合意して選んだ証拠はないとしました。業界の慣行は、明確な約定の代わりにはなりません。

税関と通関申告

  • 「税関法」第24条: 輸出貨物の発送人は、税関に対して事実のとおり申告しなければなりません。
  • 「税関法」の通関代理に関する規定: 通関業者に通関手続きを委託する場合、委託する通関事項の真実の状況を通関業者に提供しなければならず、通関業者は税関に委任状を提出しなければなりません。
  • 国家標準「通関代理サービス規範」(GB/T 37518-2019): 通関申告者は、委託者と通関代理委任状または通関委託契約を締結しなければなりません。
  • 国家標準「物流用語」(GB/T 18354-2021): 「通関」を、輸出入の通関に必要なすべての手続きを完了することと定義しています。当社はこの定義を引用して「通関は完了した」と主張しましたが、「誰の名義で通関するのか」という問いには答えられません。

外貨管理と外貨受領

  • 「外貨管理条例」第12条: 経常取引に係る外貨の収支は、真実かつ適法な取引に基づいていなければならず、金融機関は取引書類の真実性と、それが外貨収支と整合しているかを審査しなければなりません。
  • 貨物貿易の外貨管理の基本的な考え方: 輸出代金の受領者、通関申告書上の国内発送人、実際の取引当事者は、原則として一致していなければなりません。通関申告書の名義が輸出者でない場合、銀行の審査では、その外貨が真実の輸出に対応していることを証明するのは困難です。

振り返りで見えた5つの損失防止ポイント

時間を巻き戻せるなら、次のどの時点で適切に対応していても、結果はまったく違っていたはずです。

ポイント1:見積時に、「両国通関・関税込み」を価格面の強みとして打ち出しながら、書類面の結果を明記しなかった

「両国通関・関税込み、ドアツードア」は、見積上はセールスポイントでした。安く、手間がかかりません。しかし当社は、同じくらい重要な一文を書いていませんでした。「この方式では、貴社を発送人とする輸出通関申告書は提供されません。代金受領や税の還付に使用する場合は、個別通関のプランをお選びください(費用は別途)。」 この一文があれば、お客様は契約前に選択できたはずです。

ポイント2:自分たちが果たせない条項に署名した

「お客様の代金受領に利用できる受領証憑」という文言は、当時は受領書や納品書のことだと理解されていました。しかし「代金受領用」という3文字が、お客様の代金受領ニーズを当社の契約上の義務に持ち込んでしまいました。「お客様の要求を満たす」「最終ユーザーが認める」といった文言のある条項には、具体的にどの書類か、誰が発行するか、誰の名義か、を必ず確認してください。 答えられないなら、署名してはいけません。

ポイント3:下請事業者の納品物が、お客様への約束と揃っていなかった

当社がお客様に約束したのは「物流および通関」でしたが、フォワーダーへの発注時に通関方式を指定していませんでした。下請の連鎖では、川下の契約の納品物は、川上のお客様への約束と同等かそれ以上でなければなりません。 そうでなければ、中間の差分はすべて自社が負担することになります。

ポイント4:最初に尋ねられたときに、エスカレーションしなかった

お客様が最初に通関申告書を求められたのは、出荷から1か月も経っていない時期で、フォワーダーが是正するか、明確な回答を出せた可能性が高い段階でした。しかしこの依頼は現場担当者のチャットにとどまり、チケットも書面の結論も作られず、経営層にも報告されませんでした。5か月後に送金が着金したとき、問題はもはや是正できませんでした。

ポイント5:紛争が生じた後、当社の提案はお客様の目に責任逃れと映った

紛争が生じた後、当社は代替案を提示しました。たとえば、お客様の授権のもと、当社の海外関連会社が代金を代理受領して転送する案や、お客様が自ら銀行に事情を説明する案です。コンプライアンスの観点から、これらの案が実行不可能とは限りません。しかしお客様から見れば、代金の受領経路を変え、追加のコンプライアンスリスクを負うよう求められたことになります。より良い対応は、直ちに事実を書面で確認し、問題の所在を認め、当社が費用を負担する是正案を提示することでした。訴訟段階で弁護士が作る提案書や協議書簡をどれほど周到に書いても、紛争の芽の段階で出す書面の回答には及びません。

ITサービス同業者の皆様へ:そのまま使える運用リスク管理チェックリスト

以下の対応は、物流・通関だけでなく、調達代行、支払代行、許認可の代行取得、第三者アカウントの管理代行、受領代行など、「ついでに引き受ける」すべての本業以外のサービスに当てはまります。

契約と範囲

  • 本業以外のサービスは別立てにする。 物流、通関、調達、支払代行などは独立した章とし、境界を明記します。お客様が専門業者と直接契約できるものは、できるだけ再委託しません。
  • 業界用語は定義する。 「通関」「納品」「検収」「本番稼働」「移行完了」について、何を含み何を含まないか、どの書類を納めるか、書類は誰の名義かを明記します。
  • 川下での用途を確認する。 契約前に必ず「このサービスの結果を、この後何にお使いになりますか」と尋ねます。外貨の受領、税の還付、監査、保険、資産計上、当局への報告のそれぞれで、必要な書類は異なります。
  • 責任上限は定めるが、頼りすぎない。 賠償額をサービス料までとし、間接損害を除外することは可能です。ただし、約款は合理的な方法で提示・説明しなければ契約の内容にならない可能性があり、故意または重大な過失により相手方の財産に損害を与えた場合の免責条項は無効です。

履行と再委託

  • 再委託の発注書に重要な実行方法を明記する。 通関方式、発送人の名義、書類の納品リストを、下請事業者への委託書に書きます。
  • 出荷前に確認して告知する。 重要な実行方法が決まったら、書面でお客様に告知します。お客様が同意しなければ、出荷前に変更します。
  • 書類は納品と同時に渡す。 書類の納品を完了検収のチェックリストに入れ、お客様から求められるのを待ちません。

コミュニケーションと証拠

  • 契約外またはコンプライアンス関連の要望はチケット化する。 お客様がどのチャネルで書類、コンプライアンス、支払いに関する要望を出しても、受けた人はその日のうちにチケットまたは正式なメールにし、責任者が書面での回答と期限を示します。
  • チャットよりメール。 チャットは調整には向きますが、確認には向きません。本件で当社の追加費用を守ったのは、メール1通と、先方の当日の書面での返信でした。
  • 重要な証拠は早めに保全する。 メールやチャットの記録は、信頼できるタイムスタンプなどで保全し、訴訟になってから元の媒体が失われていたと気づくことのないようにします。

売掛金

  • 「支払延期」条項に注意する。 「お客様または最終ユーザーの要求を満たさない場合は支払いを延期できる」といった条項があると、紛争時にお客様が残額を正当に留保できます。契約時に「要求」を具体化するか、延期できる範囲を限定してください。
  • 「権利の上に眠らない」。 売掛金の期限が過ぎたら、期日どおりに書面で督促します。相手方は訴訟で、まさに「3年間督促がなかった」ことを、当社が非を自覚していた証拠として使いました。

お客様へ:正規のチャネルで要望を出し、委託内容を明確に書くには

この部分は、当社のお客様、そしてITサービス事業者に業務を委託するすべての企業に向けて書いています。

なぜ正規のチャネルを使うべきか

本件で最も重要な要望は、プロジェクト担当者同士のチャットで出されました。番号も、責任者も、期限もなく、誰からも書面の回答はありませんでした。お客様にとっては、要望がサービス事業者の処理プロセスに実際には入っていなかったことを意味し、サービス事業者にとっては、問題が認識されなかったことを意味します。

次のいずれかのチャネルで要望を提出し、番号を保管してください。

  • サービスデスクまたはチケットシステム: 7×24時間受け付け、すべての依頼に番号、責任者、対応期限があります。
  • お客様担当コンサルタントの業務用メール: 契約外の要望、範囲の変更、コンプライアンス関連の書類の要望に適しています。
  • 正式な書面の書簡: 紛争、賠償請求、支払いへの異議に適しています。

チャットはリマインドや調整に使えますが、リマインドと同時に、上記のいずれかのチャネルにも要望を提出してください。

委託内容に盛り込む6つの要素

正確に実行できる委託には、少なくとも次の6つの問いへの答えが必要です。

  • 何をするか: 具体的な事項。例:「ネットワーク機器一式を国内の倉庫から海外の指定データセンターまで輸送し、両国の通関を完了する」。
  • 誰の名義で: 例:「輸出通関は当社を国内発送人として行う」。この1項目が、本件では約30万人民元の価値がありました。
  • 何を納品するか: 受け取る必要がある書類を列挙し、名義、部数、形式を明記します。例:「当社を発送人とする輸出通関申告書、当社を荷送人とする航空運送状、到着地での受領書」。
  • 何のために使うか: 用途を明記します。例:「輸出代金の受領および輸出税還付に使用」。用途が書かれていれば、サービス事業者はどの実行方法が不可能かを判断できます。
  • いつまでに: サービスの納期と、書類の納期を分けて書きます。
  • どう検収するか: 検収基準と検収者、およびご協力いただく資料(通関代理委任状、電子口岸の委託確認、売買契約書、インボイスなど)。

曖昧な書き方と明確な書き方の比較

  • 曖昧な書き方: 「物流および通関サービスを提供する。ドアツードア、航空便。」
  • 明確な書き方: 「航空便ドアツードアの物流サービスを提供する。輸出通関は当社を国内発送人として個別に申告しなければならず、混載通関は受け入れない。貨物の許可後5営業日以内に、輸出通関申告書と航空運送状の電子版を納品する。用途は輸出代金の受領とする。当社は出荷の3営業日前に通関代理委任状を提供する。」

1つ目の書き方では、双方がそれぞれに理解できます。2つ目の書き方であれば、サービス事業者は見積の時点で、どの方式を選ぶべきか、費用はいくらか、お客様にどのような協力が必要かが分かります。

意見の相違が生じたときの対応

  • まず書面、それから口頭。 メールまたは書簡で、事実、要望、希望する期限を伝え、その後に電話で話します。
  • 書面での回答を求める。 サービス事業者は、約定の期限内に、是正の可否、是正の方法、費用負担を含む書面での結論を出さなければなりません。
  • エスカレーション経路に従う。 現場で解決しなければ、お客様担当コンサルタントとサービス責任者にエスカレーションします。
  • 証拠を保全し、早めに損失を止める。 まだ是正できるうちに早く申し出るほうが、事後に賠償を求めるより、多くの場合お客様の利益を守れます。

当社の改善の取り組み

今回の敗訴を受けた当社の方針はシンプルです。通関、調達、支払代行のような本業以外の事項は、お客様が専門業者と直接契約できるものについては代行しません。代行が必要な場合は、契約に実行方法と書類リストを明記し、書類を検収の対象にします。コンプライアンス関連の依頼は、どのチャネルから出されたものであっても、すべてチケット化し、書面で回答します。

ITサービス事業者を評価している、あるいは現在のサービス範囲と納品物を整理したいとお考えでしたら、お問い合わせからご要望をお寄せください。当社が7×24時間サービスデスク、マネージドITおよびクラウドサービス、ITインフラ導入サービスで、サービス範囲と納品物をどのように定めているかもご覧いただけます。

よくあるご質問

貨物が届き、バイヤーも支払ったのに、なぜサービス事業者が賠償するのですか

裁判所が見るのは、受託者に過失があったか、その過失が損害を生じさせたかです。貨物の到着が証明するのは物流の完了だけです。お客様が自社を発送人とする通関申告書を持たないために外貨を受領できなかったことは、サービス事業者が採った通関方式と因果関係があると、裁判所は判断しました。

「通関」には、お客様名義の通関申告書の提供が必ず含まれますか

概念上は必ずしも含まれません。しかし本件の契約には「お客様の代金受領に利用できる証憑」という約定があり、サービス事業者は輸出入の資格を持ち、通関方式も事前に告知していなかったため、裁判所はサービス事業者が外貨受領の必要性を予見すべきだったと認定しました。

混載通関や「両国通関・関税込み」は違法ですか

本稿は、この方式自体の評価はしません。本件の判決は、混載通関によって通関申告者と実際の取引当事者が一致しなくなり、お客様が外貨を受領できなくなったと認定しました。外貨の受領や税の還付が必要な輸出者は、事前に、その方式が書類にもたらす結果を確認しなければなりません。

お客様が個別通関を求めず、委任状も出していない場合、責任は軽くなりますか

当社は一審・二審の両方でこの主張をしましたが、採用されませんでした。裁判所は、注意喚起と確認の責任は主に専門サービスを提供する側にあるとしました。

サービス事業者は、責任上限条項で同様のリスクを避けられますか

定めるべきですが、完全には頼れません。約款は合理的な提示・説明が必要であり、故意または重大な過失により財産に損害を与えた場合の免責条項は無効です。

お客様として、書類やコンプライアンス関連の要望はどのチャネルで出すべきですか

サービスデスクのチケット、お客様担当コンサルタントの業務用メール、または正式な書簡で、事項、名義、納品物、用途、期限、検収基準を明記して提出してください。

むすび

この訴訟で当社が払った代償は、契約金額をはるかに上回りました。当社は確定判決を尊重し、すでに全額を履行しています。

振り返ると、このプロジェクトで当社が最も得意とする部分、すなわちクロスボーダーのITインフラ導入と現地のオンサイトITサポートは、無事にやり遂げました。お客様、最終ユーザー、裁判所もそれを認めています。代償を払ったのは、当社が「ついでに」引き受けるべきではなく、しかも範囲を明確に書いていなかった部分でした。

あえて書いたのは、マネージドITサービスの専門性は、機器を設置し、システムを稼働させることだけでなく、境界を明確にし、証憑を確実に渡し、「ついでに」と思える一つ一つの依頼を正式な委託として扱うことにも表れると信じているからです。

この振り返りが、お客様にとっては要望を出すときに「誰の名義で、何のために使うのか」を一言書き添えるきっかけとなり、同業者にとっては次の「ついでのお手伝い」を引き受けるとき「これで問題が起きたら、自分は責任を負えるか」と一言問うきっかけとなれば幸いです。

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