サービスリクエストとインシデントの違い:3つの判断質問と20の分類例
サービスリクエストかインシデントか。3つの判断質問、20の分類例、それぞれの処理フローで、チケットを最初から正しいキューへ振り分けます。
要点: インシデントは、これまで使えていたものが壊れた、または品質が落ちた状態です。サービスリクエストは、サービスカタログにすでにある標準的で繰り返し提供できるサービスを、ユーザーが依頼するものです。インシデントの目的は、できるだけ早くサービスを復旧すること。リクエストの目的は、合意した内容を合意した期限で提供することで、通常は承認が入ります。迷ったら、下の3つの質問を順番に確認してください。
この記事は、サービスデスクの責任者、情シス担当者、チケット管理ツールを設定する方に向けています。読み終えると、どんなチケットも1分以内に正しい種別へ分類でき、20の例で新人を教育でき、日常の依頼が障害対応のように扱われない二つの処理フローを作れます。
サービスリクエストとインシデントの違いは何か
ITIL 4の用語集は、サービスリクエストを「ユーザーまたはその権限を持つ代理人が出す、サービス提供の通常の一部として合意されたサービス行為を開始する依頼」と説明しています。インシデントは「サービスの計画外の中断、またはサービス品質の低下」です(2026年10月28日確認)。
平たく言えば次のとおりです。
- インシデント:「使えていたのに、使えなくなった。または前より悪くなった。」
- サービスリクエスト:「すでに標準的な提供方法があるものが欲しい。」
この区別が大切なのは、計測と処理の方法が違うからです。インシデントの時計は復旧までの速さを測り、リクエストの時計は約束の期日までに提供できたかを測ります。混ぜてしまうと、本当の障害が日常業務の山に埋もれ、日常業務は火消しのように見えてしまいます。
3つの判断質問
順番に聞き、最初の「はい」で止めます。
- これまで正常だったものが、壊れた、遅くなった、不安定になったか。はいならインシデントです。ユーザーの言い方が依頼調(「メールを直してください」)でも同じです。
- 何も壊れていないなら、頼まれたものはサービスカタログにある、または標準手順があるか。はいならサービスリクエストです。権限、新しい機器、ソフトのインストール、アカウント変更、「やり方を教えて」がここに入ります。
- どちらでもないなら、環境の変更や新しいものか。それは変更要求(またはプロジェクト)で、着手前に評価が必要です。同種のインシデントが繰り返され原因が不明なら、問題レコードを起こし、関連インシデントと紐づけます。
境界を判断するときの考え方が二つあります。
- 言葉ではなく、ユーザーが必要としているものを見る。「経理の共有フォルダが開けない」は、権限がもともと付いていない(リクエスト)場合も、共有が止まっている(インシデント)場合もあります。このユーザーが以前開けていたかを確認します。
- 最初の必要に従って分類する。リクエストの提供中に失敗したら、リクエストは開いたままにし、失敗に対してインシデントを起こします。黙って一方をもう一方に変えないでください。
20の分類例
インシデント(8件)
- 今朝からOutlookが接続できない:昨日は使えたので、サービスの中断です。
- 共有プリンターが白紙を印刷する:正常だったサービスの品質が落ちています。
- 会議室のWi-Fiが数分おきに切れる:サービスの劣化です。重複した報告は一つの親インシデントに紐づけます。
- ノートPCが起動時にブルースクリーンになる:ハードウェアまたはOSの障害です。
- VPNには繋がるが社内のファイル共有に届かない:サービスの一部が止まっています。
- 特定のユーザーのTeams通話で音が出ない:そのユーザーにとっては中断です。多くの人に影響するなら、優先度の高いインシデントにします。
- 社内Webアプリがエラーページを表示する:利用者全員に影響する停止です。
- 昨夜のバックアップジョブが失敗した:ユーザーはまだ気づいていないかもしれませんが、サービスの失敗なのでインシデントです。
サービスリクエスト(8件)
- 新入社員のアカウント、ノートPC、メールボックスが必要:標準の入社手続き項目です。
- 共有メールボックスにメンバーを追加:標準的な権限変更で、通常はメールボックスの所有者が承認します。
- 承認済みのアプリケーションのインストール:手順が確立しているカタログ項目です。
- SharePointサイトへのアクセス権の申請:サイト所有者の承認が要るリクエストです。
- すり減ったキーボードやマウスの交換:標準のハードウェア依頼です。
- メールボックスやOneDriveの容量の引き上げ:合意した上限内の標準的な変更です。
- 退職者のアカウント停止と機器の回収:標準の退職手続きで、人事が起点になることが多いです。
- 「スマホで会社のメールを設定するには?」:情報提供のリクエストです。回答したら、その答えをナレッジに追加します。
判断が分かれるケース(4件)
- パスワードを忘れた:標準のリセットで解決できるならサービスリクエストです。リセット自体が失敗する、または多数が同時にリセットできないならインシデントです。
- アカウントがロックされた:一度のロック解除はリクエストです。原因不明のまま何度もロックされるならインシデントで、多くの場合は問題レコードも必要です(例:スマホに古いパスワードが保存されている)。
- 「ノートPCが遅い」:以前より遅くなったならインシデント。標準より速い機種が欲しいというなら、承認が必要な例外申請です。
- ソフトのインストールがエラーで失敗する:インストールがリクエストで、エラーはそのリクエストに紐づくインシデントです。こうすると二つの時計がどちらも正確になります。
処理フローの違い
両方のフローを文書化するときは、項目の順番を揃えておくと、担当者が見比べやすくなります。
インシデントのフロー
- きっかけ:何かが止まった、または悪くなった。
- 目的:サービスの復旧。暫定的な回避策も復旧に含めます。
- 優先度:影響度と緊急度で決めます。重大度と優先度の違いとITサポートSLAの優先度P1〜P4を参照してください。
- 承認:着手に承認は不要です。修復のための緊急変更は、変更管理のルールに従います。
- 目標時間:優先度ごとの応答時間と解決時間。
- エスカレーション:サポートレベルを上げ、ベンダーへ。影響が広ければ重大インシデント対応へ移します(重大インシデント管理)。
- クローズ:ユーザーが復旧を確認して終了します。繰り返すものは問題管理へ渡します。
サービスリクエストのフロー
- きっかけ:ユーザーがカタログから項目を選ぶ、または標準フォームを送る。
- 目的:合意した内容どおりに提供する。
- 優先度:カタログ項目ごとに合意した提供時間を使うのが一般的で、影響度と緊急度のスコアは使いません。特急対応は上長が決め、ユーザーが「高」を選ぶことでは決めません。
- 承認:項目ごとに定めます(上長、データ所有者、セキュリティ)。承認なしは例外であり、標準にしません。
- 目標時間:項目ごとの提供時間。例:「入社前日までに新入社員の機器を用意する」。
- エスカレーション:承認や提供が遅れたときだけ。
- クローズ:提供が完了し、ユーザーが確認し、承認と作業が記録に残っている。
チケット管理ツールでの設定
- チケット種別を必須項目にし、インシデント、サービスリクエスト、変更要求の三つにする。問題はインシデントに紐づく別のレコードであり、フォームの四つ目の選択肢にはしない。
- サービスカタログからリクエストフォームを作り、必須項目(誰が、何を、開始日、承認者)を入れて、聞き返しを減らす。
- カタログ項目ごとに、責任者、承認者、提供時間を決める。
- SLAの時計を二つ動かす。インシデントは復旧時間、リクエストは提供時間。L1・L2・L3のサポートレベルは同じキューを共有してもかまいませんが、時計は分けます。
- 再分類は認めるが、理由を必須にして履歴を残す。チケットを削除して作り直さない。
- 上の20の例をナレッジに載せ、サービスデスクが毎回同じ基準で分類できるようにする。
よくある失敗
- すべてのチケットをインシデントとして扱う。日常の依頼が緊急扱いになり、本当の障害が埋もれます。対策:種別と時計を分ける。
- リクエストフォームで優先度をユーザーに選ばせる。全員が「高」を選びます。対策:提供時間はカタログ項目から決め、例外は上長が判断する。
- ユーザーが「お願いします」と書いたので、壊れているものをリクエスト扱いにする。対策:毎回、最初の判断質問を確認する。
- 承認の経路がない。権限の依頼が、最初に気づいた人の判断で処理されます。対策:項目ごとに承認者を決める。
- フォームの代わりに自由記述欄を使う。最初の返信が不足情報の聞き返しで終わります。対策:項目ごとに必須項目を設ける。
- 黙って種別を変える。集計が信頼できなくなり、ユーザーも混乱します。対策:理由を書いて再分類し、ユーザーにも伝える。
正しく運用できているかの確認
- 月に一度、クローズ済みチケットを20件ランダムに選び、三つの質問を当てはめて、記録されている種別と比べる。
- 再分類されたチケットの数を数える。多いなら、フォームか例の見直しが必要です。
- クローズ済みのリクエストすべてに、カタログ項目と(必要な場合は)承認者が記載されているか確認する。
- 項目別に提供時間を見る。いつも遅れる項目は、催促を増やすのではなく、目標の見直しか人員の追加が必要です。
- リクエストのチケットで「動かない」「エラー」「落ちている」などの語を検索する。ヒットしたものは、誤分類されたインシデントの可能性があります。
よくある質問
ServiceNowでは、サービスリクエストとインシデントはどう違いますか?
ServiceNowを含むどのチケット管理ツールでも、判断は同じです。使えていたサービスが壊れた、または劣化したならインシデントを起票し、ユーザーがカタログにある項目を求めているならリクエストを起票します。レコードの種別とSLAの時計は、別々に持ちます。
パスワードのリセットは、サービスリクエストですか、インシデントですか?
通常のパスワードリセットは、ユーザーが受ける権利のある標準的な操作なので、サービスリクエストです。リセットの仕組み自体が壊れている、または多数のユーザーが同時にロックされているなら、インシデントです。
サービスリクエストと変更要求はどう違いますか?
サービスリクエストは、権限付与や標準インストールのように、カタログにあり手順が確立しているものを求めます。変更要求は、新しいファイアウォールルールや新しいシステムのように環境を変更するもので、着手前に評価と承認が必要です。
サービスリクエストのSLAはどう決めますか?
多くの場合、影響度による復旧時間ではなく、カタログ項目ごとにあらかじめ合意した提供時間です。目標の書き方はITサポートにおけるSLAとはをご覧ください。
インシデントとサービスリクエストの例を教えてください。
上の20の例に、障害(インシデント)、標準的な依頼(サービスリクエスト)、判断が分かれる4つのケースを載せています。
インシデントとリクエストを分けて管理し、それぞれレポートまで出せるサービスデスクをお探しなら、24時間365日ヘルプデスクITサポートをご覧ください。
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