Exchange Online Protectionの設定:フィッシング・スパム対策の推奨値とSPF・DKIM・DMARC
Exchange Online Protectionのフィッシング・スパム・マルウェア対策の推奨値と、SPF・DKIM・DMARCの設定手順をまとめました。
要点: 最も手早く安全な進め方は、全ユーザーにStandardの事前設定済みセキュリティポリシーを、リスクの高いアカウントにStrictを適用し、送信ドメインごとにSPF・DKIM・DMARCを公開することです。プリセットの対象外で手動設定が必要なのは、主に送信スパムの上限と自動転送です。最後にConfigurationアナライザー(Configuration analyzer)で、StandardやStrictより弱い設定を洗い出します。
Microsoft 365テナントの管理者向けに、Exchange Online Protection(EOP)でどの設定を使い、どう適用するかを説明します。Microsoftは現在EOPを「すべてのクラウドメールボックスの組み込みセキュリティ機能(built-in security features for all cloud mailboxes)」と呼んでおり、最新のLearnではこの名称が使われています。記載の値は2026年10月28日にMicrosoft Learnで確認しました。
EOPが対象とする範囲
組み込みの保護は、すべてのクラウドメールボックスで既定で有効です。マルウェア対策、受信・送信のスパム対策、接続フィルター、フィッシング(スプーフィング)対策、そして配信後に不審メールを取り除くゼロアワー自動消去(ZAP)が含まれます。既定の脅威ポリシーは無効にできませんが、プリセットまたはカスタムのポリシーで上書きできます。インパーソネーション対策、フィッシングメールのしきい値、Safe Links、Safe AttachmentsにはMicrosoft Defender for Office 365が必要です(Defender for Office 365 Plan 1とPlan 2の違いを参照)。
SPF・DKIM・DMARCは先に、または並行して整えてください。Microsoftは、これらが欠けている、または誤っていると、推奨のポリシー設定でも正規のメールが迷惑メールや隔離に入る場合があると注意しています。
手順1:事前設定済みセキュリティポリシーを有効にする
- Microsoft Defenderポータル(security.microsoft.com)を開きます。
- Email & collaboration > Policies & rules > Threat policies > Preset Security Policies(Templated policiesセクション)に進みます。
- 初回はStandard protectionとStrict protectionがオフになっているのが通常です。Standard protectionのトグルをOnにし、Manage protection settingsを選んでウィザードを開始します。Apply Exchange Online ProtectionのページでAll recipientsを選びます。
- 任意:Strict protectionをオンにし、役員、経理、IT管理者など少人数にだけ割り当てます。Microsoftの適用順は、Strict、Standard、既定・カスタムポリシーの順です。
必要な権限は、Organization ManagementまたはSecurity Administratorロールグループです。閲覧のみならGlobal Readerで足ります。
プリセットの設定の大半は編集できません。別の値が必要な場合は、カスタムポリシーを作り、下記の推奨値を使ってください。
手順2:カスタムポリシーを作る場合の推奨値
値は「既定、Standard、Strict」の順で、Microsoftの推奨設定ページによります。
スパム対策ポリシー(Anti-spam)
- Bulk email threshold(バルクメールのしきい値):7、6、5。
- Spam(スパム)の処理:迷惑メールフォルダーへ移動、迷惑メールフォルダーへ移動、隔離。
- High confidence spam(高信頼度スパム)の処理:迷惑メールフォルダーへ移動、隔離、隔離。
- Phishing(フィッシング)の処理:迷惑メールフォルダーへ移動(既定ポリシー)、隔離、隔離。
- High confidence phishing(高信頼度フィッシング)の処理:3つとも隔離。ユーザーは高信頼度フィッシングを自分でリリースできません。
- Bulk complaint level(BCL)に達した場合の処理:迷惑メールフォルダーへ移動、迷惑メールフォルダーへ移動、隔離。
- スパムの隔離保持期間:15日、30日、30日。
- スパムとフィッシングのゼロアワー自動消去:3つともオン。
マルウェア対策ポリシー(Anti-malware)
- Common attachments filter(一般的な添付ファイルのフィルター):3つともオン。
- これらのファイルの種類が見つかった場合:3つとも「配信不能レポート(NDR)付きでメッセージを拒否」。
- マルウェアのゼロアワー自動消去:3つともオン。
- 隔離ポリシー:3つともAdminOnlyAccessPolicy。
フィッシング対策ポリシー(スプーフィング、全メールボックス対象)
- Enable spoof intelligence(スプーフインテリジェンス):3つともオン。
- Honor DMARC record policy(DMARCレコードのポリシーに従う):3つともオン。送信元のDMARCが
p=quarantineなら隔離、p=rejectなら拒否します。 - スプーフインテリジェンスでスプーフィングと判定された場合:迷惑メールフォルダーへ移動、迷惑メールフォルダーへ移動、隔離。
- Show first contact safety tip(初めての連絡先の安全ヒント):既定はオフ、StandardとStrictはオン。
- Show (?) for unauthenticated sendersとShow "via" tag:3つともオン。
送信スパムポリシー(プリセットの対象外)
- 1時間あたりの外部宛てメッセージ上限:Standard推奨は500、Strict推奨は400。
- 1時間あたりの社内宛てメッセージ上限:Standardは1000、Strictは800。
- 1日あたりのメッセージ上限:Standardは1000、Strictは800。
- 上限に達したユーザーへの制限:メール送信を制限する。
- Automatic forwarding rules(自動転送ルール):Off - Forwarding is disabled(転送を無効)。既定はシステム制御です。
手順3:SPF・DKIM・DMARC
これらはDNSのホスティング先で公開します。Microsoft 365にはSPFやDMARCレコードを管理する画面がありません。
SPF
送信ドメインごとに、ルートにTXTレコードを1つ作ります。メールの送信元がMicrosoft 365だけの場合:
v=spf1 include:spf.protection.outlook.com -all
Microsoftのルールは、ドメインまたはサブドメインごとにSPFレコードは1つだけ、DNSルックアップは10回未満、TTLは3600秒以上です。メールを送るサブドメインには、それぞれSPFレコードが必要です。メールを送らないドメインにはv=spf1 -allを公開します。
DKIM
- DefenderポータルでEmail & collaboration > Policies & rules > Threat policies > Email authentication settingsを開き、DKIMタブを選びます。
- 対象のカスタムドメインを選ぶと公開すべき2つのCNAME値が表示されます。PowerShellでも取得できます。
Connect-ExchangeOnline
Get-DkimSigningConfig -Identity contoso.com | Format-List Name,Enabled,Status,Selector1CNAME,Selector2CNAME
# ドメインの構成がまだない場合:
New-DkimSigningConfig -DomainName contoso.com -Enabled $false
- DNSで、
selector1._domainkeyとselector2._domainkeyのCNAMEを、表示された値に向けて作成します。例の値ではなく、自社テナントの値を使ってください。 - DNSが反映されたら署名を有効にします。DKIMタブでドメインの詳細フライアウトを開き、Sign messages for this domain with DKIM signaturesをオンにします。MicrosoftがCNAMEレコードを検出するまで、ステータスはCnameMissingと表示され、数分以上かかることがあります。または
Set-DkimSigningConfig -Identity contoso.com -Enabled $trueを実行します。
DMARC
Microsoftの推奨どおり段階的に進めます。ホスト名は_dmarc、レコードの種類はTXTです。
- まず
v=DMARC1; p=none; pct=100; rua=mailto:dmarc-reports@contoso.comで集計レポートを確認します。 p=quarantineに上げ、pctを10、25、50、75、100と段階的に増やします。- 正規の送信元がすべて通ることをレポートで確認できたら
p=rejectにします。
レポートの宛先は、個人の受信トレイではなく共有メールボックスかグループにします。自社で管理できないサードパーティの送信サービスにはサブドメインを使います。
手順4:Configurationアナライザーで確認する
Email & collaboration > Policies & rules > Threat policies > Configuration analyzerを開くか、security.microsoft.com/configurationAnalyzerに直接アクセスします。Standard recommendationsタブにはStandardより弱い設定が、Strict recommendationsタブにはStrictより弱い設定が一覧表示されます。行を選ぶと理由が表示され、項目によってはApply recommendation(推奨を適用)も使えます。Configuration drift analysis and historyタブでは最大90日間の変更を確認でき、統合監査が有効である必要があります。
主要な値をPowerShellで読み出すには次のようにします。
Get-HostedContentFilterPolicy | Format-List Name,BulkThreshold,SpamAction,HighConfidenceSpamAction,PhishSpamAction,QuarantineRetentionPeriod
Get-MalwareFilterPolicy | Format-List Name,EnableFileFilter,FileTypeAction,ZapEnabled
Get-AntiPhishPolicy | Format-List Name,HonorDmarcPolicy,DmarcQuarantineAction,DmarcRejectAction
よくある失敗
- 既定ポリシーを編集して、プリセットのほうが優先されることを忘れる。 ユーザーがプリセットの対象なら、カスタムポリシーはそのユーザーに適用されません。
- SPFレコードを2つ公開する。 1つのドメインに2つあると永続エラーになります。1つにまとめてください。
- いきなりDMARCを
p=rejectにする。p=noneから始め、レポートを見て漏れている送信元を追加します。 - SPFを
~allで終えてDMARCが働くと期待する。 Microsoftは-allを推奨しています。SPFに失敗しDKIM署名もないメールにDMARCが作用できるようにするためです。 - 送信上限と自動転送を既定のままにする。 この2つはプリセットの対象外なので手動で設定します。
- 例に載っているDKIMのCNAME値をそのまま使う。 必ず自社テナントに表示された値をコピーします。
動作の確認方法
- Preset security policiesページで、Standardがオンで、想定した受信者が表示されていることを確認します。
- Microsoftが示すテスト方法:スパム(高信頼度ではないもの)は、Standardのユーザーでは迷惑メールフォルダー、Strictのユーザーでは隔離になります。
- Microsoftが示すバルクメールのテスト:BCLが6以上のバルクメールはStandardで迷惑メールフォルダー、BCLが5以上はStrictで隔離されます。
- 社外のメールボックスへ送信し、ヘッダーで
spf=pass、dkim=pass、dmarc=passを確認します。 - Configurationアナライザーを再実行し、要対応の件数が減っていることを確認します。
- ポリシーを厳しくしている間は、DMARCの集計レポートを週に一度確認します。
FAQ
「this message is protected with Microsoft information protection」とは何ですか。
送信者がMicrosoft Purviewのメッセージ暗号化または権限保護をかけたという意味です。受信者は認証しないと読めず、転送などが制限されている場合もあります。Outlookで暗号化メールを送る方法をご覧ください。
Microsoft 365にExchange Online Protectionは含まれますか。
Microsoftは、組み込みの保護はクラウドメールボックスを持つすべての組織に含まれるとしています。オンプレミスのメールボックス向けには、別途の組み込みセキュリティ サブスクリプションもあります。価格はMicrosoftの料金ページで確認してください。
EOPとDefender for Office 365の違いは何ですか。
EOPは、スパム対策、マルウェア対策、スプーフィングに対するフィッシング対策、接続フィルター、ZAPを提供します。Defender for Office 365はSafe Links、Safe Attachments、インパーソネーション対策、フィッシングメールのしきい値を加え、Plan 2では調査やシミュレーションのツールも加わります。
フィッシング対策ポリシーはどう設定すべきですか。
スプーフインテリジェンスとHonor DMARC record policyをオンにし、p=quarantineなら隔離、p=rejectなら拒否、初めての連絡先の安全ヒントを表示します。最も簡単なのは、全員にStandardのプリセットポリシーを割り当てることです。
Exchange Online ProtectionはMicrosoft 365で何をしますか。
すべてのクラウドメールボックスに備わる組み込み保護の一式で、スパム対策、マルウェア対策、スプーフィングに対するフィッシング対策、接続フィルター、ゼロアワー自動消去を含みます。Microsoftは現在これを「すべてのクラウドメールボックスの組み込みセキュリティ機能」と呼んでいます。自社の設定を確認するには、前述のConfigurationアナライザーを使います。
あわせてMicrosoft 365セキュリティチェックリストとMicrosoft Secure Score・CIS Benchmark・SCuBAGearの比較もご覧ください。
テナント設定を第三者の目で確認したい場合は、これらの設定を点検するMicrosoft 365セキュリティ監査をご利用ください。
着手前に本格的な監査の料金を知りたい場合は、Microsoft 365 セキュリティ監査の費用で人数別の固定料金をまとめています。
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